
小児科
小児科
こどもは胎児期を含め、新生児から乳幼児、小学生、中学生にかけて成長する際に様々な疾患にかかることがあり、それらの解決をサポートする必要があります。無事生まれてから成長するにあたり重要なものは感染症です。予防接種や抗菌薬の出現により、医療の発達も合わせ多くのこどもが救われるようになりました。予防可能なものは予防接種のみならず手洗い、うがい、必要に応じたマスク着用をはじめとした様々な予防策を行い、感染や重症化を防ぐことが重要になります。また地域の園や学校での感染症流行状況の把握も対策するにあたり大切になります。感染症は気道や消化管、尿路、皮膚など様々な部位に影響を与え、多彩な症状を示します。同じ感染症でも人によって症状は異なり、重症化してしまう場合もあります。うまく症状を訴えることのできないこどもの状態を診察で把握し、ご家族の意見、方針などを含め総合的に判断してこどもにとってより適切な医療を提供できるよう努めます。
感染症の他にもこどもにとって重要な病気は多岐にわたります。以下に代表的な症状と疾患などを示します。様々な症状について小児外科医の視点が活かせるよう、丁寧な診察を心がけます。
発熱に関して緊急度の高い状態は新生児や3か月未満の乳児で重篤な状態に陥りやすい細菌性髄膜炎です。症状としては発熱に加え、なんとなく元気がない(not doing well)、哺乳力低下、呼吸の異常、けいれんなどがみられます。一刻も早い検査、抗菌薬投与が必要になりますので、おかしいと思われた場合は医療機関への速やかな受診をお願いします。前述の年齢以外にも髄膜炎は起こりますので、注意が必要です。髄膜炎では麻痺や知的障害、難聴、けいれんなどの後遺症をきたす場合があり、治療開始が遅れた場合は命にかかわることがあります。予防接種は細菌性髄膜炎の減少に効果があるとされます。
他の原因としては尿路感染症があります。膀胱尿管逆流といって膀胱から腎臓につながる尿管への尿の逆流が感染の原因となり、腎機能へ悪影響を及ぼす場合があります。先天的な尿路奇形が原因となることもあり、エコー検査で水腎症や尿管拡張、尿道の異常を確認します。他に、当院では施行できませんが、小児外科では尿路の異常を評価する造影検査や膀胱鏡検査を行うことがあります。
他にはいわゆる風邪を含むウイルス感染症があり、症状に対する治療だけでなくウイルスに応じた感染対策も重要になります。
咳が続き、肺炎が疑われる場合はレントゲンや、不機嫌で耳をさわるなど中耳炎が疑われる場合は耳鏡検査など発熱以外の症状から必要に応じて検査を行います。
発熱の背景にはこれら以外にも多様な疾患が隠れていますので、慎重な診察と経過観察が必要です。
こどもにおける呼吸状態の評価は非常に重要です。大人と異なり、こどもの気道は狭く、容易に呼吸困難に陥ることがあります。小児の心肺停止は呼吸が原因のことが多いとされ、呼吸異常への対応は重要になります。
小児外科では小児の気道緊急に対応することが多く、総合病院では気管支鏡検査による気道の評価や緊急時の気管切開などを行います。気道の異常では舌の嚢胞や、喉頭軟化症、声門下腫瘤、声門下狭窄や気道狭窄、外傷による血種など多くの病気が原因となります。異物が確認できる場合もあります。ただし全身麻酔下での評価が必要なことが多いため。大きい検査が必要な時は総合病院への紹介が必要になります。レントゲンでわかる異常もあるため、当院での評価はある程度可能です。
クループと呼ばれる声門下狭窄や、急性喉頭蓋炎など感染症によるものや、食物アレルギー、気道の慢性炎症である喘息による呼吸異常もあります。喘息に関しては気道炎症を抑えるため適切なコントロールが重要で、自己判断による受診中断は望ましくありません。悪化した場合とても苦しいため救急搬送される場合があります。
また、呼吸の異常は心臓の病気によるものもあります。レントゲンで心臓や肺の状態、エコーを用いて心臓の状態を把握することは重要です。
呼吸の異常は症状をうまく表現できないこどもの重要なサインです。いつもの呼吸と異なる場合はためらわず医療機関への受診をお願いします。
胸が痛い場合は心血管系や肺、食道、筋肉・骨・軟骨、原因不明なものがあります。大人のような心臓によるものは少なく原因不明で自然軽快するものも含まれますが、それぞれに注意は必要です。以下にすべてではありませんが、代表例を示します。
心血管系ではウイルス感染などが原因になる急性心筋炎の他に、心膜炎、肥大型心筋症、冠動脈疾患、特定の疾患でみられる大動脈解離などがあります。レントゲンや心エコーが一部の診断に役立ちます。これらは重篤なものが多く、特に注意が必要です。
肺に関連するものは、肺炎や喘息、胸膜炎、膿胸、気胸、縦隔気腫などが挙げられます。レントゲンで診断がつくものもありますが、場合によってはCT検査が必要です。小児外科では気胸に対するドレナージ術(肺からの空気漏れを胸の外に逃がす)や、膿胸(肺の周りに膿がたまり肺が膨らみにくくなる)に対する胸腔鏡下手術を担当することがあります。肺炎は抗菌薬治療、喘息は気管支拡張剤の吸入や炎症を抑える治療などを行うことが一般的です。
食道に関しては食道異物や胃食道逆流症による食道炎を考える必要があります。異物はコインなどであればレントゲンで確認できる場合があります。胃食道逆流に関しては症状や体重増加を確認、程度に応じて制酸剤の投与を行います。小児外科では内視鏡などによる異物摘出や胃食道逆流症に対する腹腔鏡下手術が行われますが、必要と判断された場合は全身麻酔が必要なため他院へ紹介となります。
筋肉・骨・軟骨では、外傷による痛みや、肋間筋、肋軟骨、肋間神経などが原因となって胸痛が起こります。原因不明の前胸部キャッチ症候群はこどもにおける胸痛の一つとして有名ですが、他の疾患が隠れていないか慎重な判断が必要です。
おなかの中にはたくさんの臓器が存在します。それぞれの臓器ごとに考えられる病気が異なりますが、問診や診察、エコー、レントゲンなどを駆使して緊急度の高い病気を見つけることは非常に重要です。こどもの場合は便秘症や感染性胃腸炎などは多く認められますが、中には急性虫垂炎や腸重積、腸閉塞、胃十二指腸潰瘍、卵巣捻転、外傷による膵損傷や肝・脾損傷、非常にまれですが胆石や胆道拡張症が原因となる総胆管閉塞など実に様々な病気がみられます。意外かもしれませんが、精索捻転による精巣の虚血が腹痛で発症することは多く経験します。これらの疾患は小児外科が扱うことが多く、手術を要するものが含まれることから早期発見して適切な医療機関へ迅速に紹介を行う必要があります。慢性的な痛みの場合はどんな痛みか、どの程度の時間続くか、どの時間帯に多いか。週何回起こるのか、他の症状(発熱や下痢、血便など)はあるかといったことも重要な情報になるため、普段から記録しておくことはとても大切です。大多数は自然によくなったり、薬物治療などで治ることが多く、手術になる例は腹痛全体からみるとわずかですが、こどもの将来を考えると小児外科医の経験を活かした診察を行って一人でも多くのこどもを救いたいと考えています。
近年、インターネットの普及に伴い発達障害の情報や認知が増え、発達障害診断の需要が増えている印象です。当院では発達検査には対応していませんので、発達に関する相談があった場合は診察の後に適切な医療機関へ紹介することになります。昨今の需要の多さから、医療機関によっては受診まで時間がかかる場合があります。当院としては、成長にあたりこどもの特性によってさまざま問題が生じることがあると思いますので、例えば慢性の便秘や腹痛、多動に伴うけがなど、必要な治療を行いつつ本人の特性に合わせた方法で解決をはかりたいと考えています。普段からどのような特性があるのかお伝えいただけますと、診療の助けになりますので気軽にご相談ください。気分によっては診察に非協力的になる場合もあると思います。状況が許せばその時は無理をせず、落ち着いているときに診察を行ったり、その時々で状態を見極めながら治療をすすめていけるよう配慮します。
こどもの外性器の異常に気付かれ、どう扱っていいのかわからず悩まれることがあります。女児であれば陰唇癒合、男児であれば包茎が代表例です。特に男児の包茎の相談は多いですが、診察して適切なケアを提案させていただきますので無理やり剥いたりせずに受診を検討してください。おしっこの時に痛い、うまくおしっこできないなど困りごとがあれば早めの受診が望ましいです。小児外科では包茎手術を含めその他の手術を担当しますので、手術が必要かどうかの助言や紹介が可能かと思いますが、最終的には手術を担当していただける紹介先の先生の判断になります。他にも形が気になったり、できものができていたり気になることがあれば受診を検討してください。
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